産業廃棄物収集運搬業許可とは
産業廃棄物収集運搬業とは、産業廃棄物の排出事業者から委託を受けて、その事業者が排出した廃棄物を処分場まで運搬する事業を言います。
産業廃棄物収集運搬業を行うためには、産業廃棄物収取運搬業許可を受けなくてはなりません。
許可申請の場所
産業廃棄物収集運搬業許可は、廃棄物を回収する都道府県と処理場がある都道府県の両方で取る必要があります。
例えば、東京都の建設工事現場で排出された産業廃棄物を、栃木県の処理場に運搬する場合は、東京都と栃木県の両方の許可を受ける必要があります。
この場合、車両が埼玉県を通過する事になりますが、こうした通過地点で廃棄物を回収したりおろしたりする場合でなければ、通過地点の自治体では許可を取る必要はありません。
産業廃棄物収取運搬業許可が不要となるケース
自社が排出した産業廃棄物を運搬する場合
産業廃棄物収集運搬業許可は、他社が排出した産業廃棄物を運搬して処理料金を得るための許可ですから、自社が排出した産業廃棄物を運搬する場合は許可は不要です。
ただし、グループ会社が排出した産業廃棄物は他社の廃棄物とされますので、これを運搬する場合は許可が必要となります。
産業廃棄物に該当しない廃棄物を運搬する場合
「産業廃棄物」に該当する廃棄物は20種類法律で定められており、これに該当しない廃棄物は一般廃棄物などに該当するため、産業廃棄物収集運搬業許可で運搬することはできません。
また、産業廃棄物に該当する廃棄物であっても、特定の事業活動によって生じた廃棄物のみが産業廃棄物とされる場合があります。
なにが産業廃棄物に該当するかを、以下でまとめます。
種類 | 具体的な例 | ||
---|---|---|---|
あらゆる事業活動に伴って発生するもの | 1 | 燃え殻 | 石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃排出物、その他焼却残さ |
2 | 汚泥 | 排水処理後および各種製造業生産工程で排出された泥状のもの、活性汚泥法による余剰汚泥、ビルピット汚泥、カーバイトかす、ベントナイト汚泥、洗車場汚泥、建設汚泥等 | |
3 | 廃油 | 鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄油、切削油、溶剤、タールピッチ等 | |
4 | 廃酸 | 写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類等すべての酸性廃液 | |
5 | 廃アルカリ | 写真現像廃液、廃ソーダ液、金属せっけん廃液等すべてのアルカリ性廃液 | |
6 | 廃プラスチック類 | 合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む)等固形状・液状のすべての合成高分子系化合物 | |
7 | ゴムくず | 生ゴム、天然ゴムくず | |
8 | 金属くず | 鉄鋼または非鉄金属の破片、研磨くず、切削くず等 | |
9 | ガラスくず、コンクリートくず及び陶器くず | ガラス類(板ガラス等)、製品の製造過程等で生ずるコンクリートくず、インターロッキングブロックくず、レンガくず、廃石膏ボード、セメントくず、モルタルくず、スレートくず、陶磁器くず等 | |
10 | 鉱さい | 鋳物廃砂、電炉等溶解炉かす、ボタ、不良石炭、粉炭かす等 | |
11 | がれき類 | 工作物の新築、改築または除去により生じたコンクリート破片、アスファルト破片その他これらに類する不要物 | |
12 | ばいじん | 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法に定める特定施設または産業廃棄物焼却施設において発生するばいじんであって集じん施設によって集められたもの | |
特定の事業活動に伴って発生するもの | 13 | 紙くず | 建設業に係るもの(工作物の新築、改築または除去により生じたもの)、パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず |
14 | 木くず | 建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、木材・木製品製造業(家具の製造業を含む)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木材片、おがくず、バーク類等、貨物の流通のために使用したパレット等 | |
15 | 繊維くず | 建設業に係るもの(範囲は紙くずと同じ)、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず | |
16 | 動植物性残さ | 食料品、医薬品、香料製造業から生ずるあめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚および獣のあら等の固形状の不要物 | |
17 | 動物系固形不要物 | と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥に係る固形状の不要物 | |
18 | 動物のふん尿 | 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等のふん尿 | |
19 | 動物の死体 | 畜産農業から排出される牛、馬、豚、めん羊、にわとり等の死体 | |
20 | 産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記1~19いずれにも該当しないもの(コンクリート固形化物など) |
産業廃棄物収集運搬業許可の要件
許可を受けるためには、以下の要件を全てクリアする必要があります。
1.講習会の受講が修了していること
財団法人日本産業廃棄物処理センター主催の産業廃棄物収集運搬過程の講習会を修了しなければなりません。
講習会はいくつか種類があるので、自社が取得する許可の種類に合わせて適切な講習会を受講する必要があります。
また、新規用と更新用の講習会がありますが、既に他の自治体で産業廃棄物収集運搬業の許可を受けている場合、更新の修了証で新規許可申請が可能となるケースがあります。
受講者
申請者が法人の場合:取締役または営業所の責任者
申請者が個人事業の場合:個人事業主または営業所の責任者
※営業所の責任者による受講の場合、様々な制約があります。常勤役員の受講を強くおすすめします。
講習会の有効期間
新規許可講習の修了証の期限は5年、更新許可講習の修了証の期限は2年となります。
2.経理的基礎の要件
会社の経営状況が審査の対象となります。
未納の税額があったり赤字だからといって、絶対に許可が取れないという訳ではありませんが、こうした場合は通常の書類に加えて様々な確認資料の提出が求められることがあります。
3.事業計画の要件
どのような事業者が排出した廃棄物をどの処分場にいかなる方法で運搬するかは予め決めた上で許可申請をする必要があります。
石綿含有産業廃物については、許可申請先の自治体に受け入れ可能な最終処分場が存在しない場合があります。
そうした場合はその自治体では石綿含有産業廃棄物の許可が取れない場合が有りますので、注意が必要です。
4.運搬施設の要件
運搬車両、駐車場及び運搬容器などは予め用意した上で許可申請をする必要があります。。
5.欠格事由の要件
役員、株主、政令使用人が以下の欠格事由にあたらない事が必要です。
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
- 禁固以上の刑を受け、5年を経過していない者
- 廃棄物処理法などの法令に違反し、罰金以上の刑の処罰を受け、5年を経過しない者
- 暴力団員の構成員である者など