レンタカー事業許可とは
自家用自動車を有償で他人に貸す事業を行う場合には、国土交通大臣からレンタカー事業許可(正式には自家用自動車有償貸渡業といいます。)を受ける必要があります。
このレンタカー事業許可を受けるには、個人の場合はその事業場、法人の場合は法人の本店所在地を管轄する運輸支局長あてに申請書類を提出しなければなりません。
レンタカー許可は比較的取りやすい許可といえますが、役所の窓口に書類を出せばだれでも取れるというわけではありません。レンタカー許可を取るのにどのような条件があるのか、以下で詳しく見ていきます。
レンタカーとして利用できる車両
レンタカーとして貸し渡すことができる車両には一定の制限があります。
- 自家用乗用車
- 自家用マイクロバス(乗車定員29人以下であり、かつ、車両長が7m以下の車両に限る。)※1
- 自家用トラック
- 特殊用途自動車
- 自動二輪車(126cc以上。125cc以下の自動二輪車をレンタルする場合はレンタカー事業許可は不要です。)
※1 マイクロバスをレンタカーとして貸渡す場合には以下の制限があります。
- 運行区間、行先、利用人数および使用目的を貸渡を行う7日前までに営業所を管轄する運輸支局長まで届け出ること
- レンタカー事業で2年以上の経営実績があること、と制限が設けられています。
レンタカーとして使用できない車両
以下の車両はレンタカーとして貸渡をすることができません。
- 自家用バス(乗車定員30名以上、車両の長さが7mを超えるもの)
- 霊柩車
レンタカー事業許可を受ける条件
レンタカーに使用できる車両がある場合でも、法律で定められた一定の条件をクリアできないときはレンタカー許可を受けることができません。このように許可を受けるために定められた法律で定められた条件を許可要件といいます。レンタカー許可の要件について以下で詳しく見ていきます。
許可要件
レンタカー事業を始めるには、次の許可要件を満たすことが必要です。
- 申請者(法人の場合は役員全員)が欠格事由に該当しないこと
- 貸渡自動車の保管場所があること
- 貸渡自動車は、万が一の事故に備えて十分な補償を行えるように、自動車保険に加入するものであること ※
- レンタカー事業を営む事務所ごとに責任者を配置することができること(責任者には、資格要件はありません)
- レンタカー事業を営む事務所ごとに整備管理者又は整備責任者を配置することができること
これらの許可要件について、以下で詳しく見ていきます。
1.欠格事由について
欠格事由とは法律で要求される資格を欠くことがらをいいます。以下の事由に該当するときは、許可を受けることができません。
ア | 1年以上の懲役又は禁錮の刑処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者であるとき |
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イ | 一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しを受け、取消しの日から2年を経過していない者であるとき |
ウ | 一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しの処分に係る行政手続法(平成 5 年法律第 88 号)第 15 条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(当該事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から 2 年を経過していない者。 |
エ | 一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの監査が行われた日から許可の取消しの処分に係る聴聞決定予定日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(当該事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から 2 年を経過していない者。 |
オ | 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は成年被後見人である場合において、その法定代理人がアからオに該当する者。 |
カ | 申請日前2年前以降において、自動車運送事業経営類似行為により処分を受けている者。 |
2.自動車の保管場所について
カーシェアリングを除くレンタカー許可申請の場合は、申請時に車両の駐車場がなくてもレンタカー許可は取れますが、レンタカー許可を取得した後に「わ」ナンバーを取り付ける際に車庫証明が必要になります。
使用の本拠と駐車場の距離は2キロ以内にないと車庫証明は取れませんから、レンタカー許可を取得する際はあらかじめ駐車場が確保できるか確認をしておく必要があります。
なお、車庫は一か所である必要はありませんから、使用の本拠から半径2キロ以内であれば複数の車庫を使用しても構いません。
レンタカーに使用する車両の車庫証明を取得する際の「使用の本拠」は以下の通りとなります。
- 一般的なレンタカーの場合:配置事務所
- レンタカー型カーシェアリングの場合:保管場所である車庫
3.自動車保険の内容について
自動車保険については、最低限以下の保障が用意されている必要があります。最低保証をみたせばレンタカー許可を受けることはできますが、実務では対人・対物は無制限の保証を設定するのが一般的です。
- 対人保険(1人あたり):8000万円以上
- 対物保険(1件あたり):200万円以上
- 搭乗者保険(1人あたり):500万円以上
4.事務所ごとに配置する責任者について
レンタカーを営む営業所ごとに、それぞれ別の責任者を配置する必要があります。この責任者になるには資格等は不要ですが、通常は店長、部長、取締役等、営業所のレンタカー事業の運営・管理の責任を負う者が就任することが想定されています。
この責任者は、毎年 1 回全従業員に対して道路運送法関係法令講習を行う必要があります。
5.整備管理者又は整備責任者について
レンタカー許可取得には、車両を整備・管理する整備管理者または整備責任者を定める必要があります。つまり、営業所の台数が10台以上であれば一定の資格を有する整備管理者の配置が必要とる一方、9台以下であれば資格がいらない整備責任者を配置すればよいことになります。
整備管理者の要件
整備管理者は、下記のいずれかに該当する者である必要があります。
- 3級以上の自動車整備技師の資格を持っている者
- 資格がない場合は自動車の整備管理の実務経験が2年以上ある者が、「整備管理者選任前講習を修了」した者。
整備管理者が必要となるケース
次の場合は、上記の資格や実務経験を有する整備管理者を定める必要があります。
- 自家用自動車10台以上をレンタカー登録する場合
- 乗車定員11人以上のバス1台以上をレンタカー登録する場合
- 総重量8t以上のトラック5台以上をレンタカー登録する場合
整備責任者を定めればよいケース
一方、次の場合は資格や実務経験が不要な整備責任者を定めればよいとされています。
- レンタル車両が9台以下の場合
- 乗車定員11人以上のバスをレンタル車両登録しない場合
- レンタル車両の中で、総重量8t以上のトラック4台以下の場合
その他注意点
法人登記の目的欄の記載について
レンタカー許可の許可要件には、法人登記の目的欄にレンタカー事業を営む旨の記載があることは求められていませんが、実務上は法人登記の目的欄にこうした記載がなければ許可の受付がされないことがあります。
東京は定款の記載が必須です。
個人事業からの法人成りはできない
レンタカー許可は法人でも個人でも取得できますが、個人で取得した許可を法人化することはできません。
運転手付きでレンタカーを貸渡すことはできない
ドライバー付きで車両を貸渡すことはできません。
国外運転免許証で運転できる国には制限がある
日本国内で国外運転免許証で運転できる国は、道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)加盟国に限られています。
ヨーロッパ
アフリカ
中近東
アジア
アメリカ
オセアニア
行政区域