お酒を販売するには酒類販売免許を受けなければなりません。

酒類販売業免許を取得する場合は、法律で定めた条件(要件)を全てクリアしなければなりません。そこで、酒類販売業免許の要件を詳しく見てみましょう。

人的要件

人的要件とは、申請者について免許交付の可否を判断する基準です。
申請者やその役員について以下のいずれかに当てはまる場合は、酒類販売業免許は交付されません。

酒税法第10条要件
1号酒税法の免許又はアルコール事業法の許可を取り消された日から3年を経過していない場合(酒類不製造又は不販売によるものを除きます。
2号法人の免許取消し等前1年内にその法人の業務執行役員であった者で、当該取消処分の日から3年を経過していない場合
3号申請者が未成年者等でその法定代理人が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合
4号申請者等が法人の場合で、その役員が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合
5号販売場の支配人が欠格事由(1、2、7~8号)に該当する場合
6号免許の申請前2年内に、国税又は地方税の滞納処分を受けている場合
7号国税・地方税に関する法令、酒類業組合法若しくはアルコール事業法の規定により罰金刑に処せられ、又は国税犯則取締法等の規定により通告処分を受け、その刑の執行を終わった日等から3年を経過していない場合
7号の2未成年者飲酒禁止法、風俗営業等適正化法(未成年者に対する酒類の提供に係る部分に限ります。)、暴力団員不当行為防止法、刑法(傷害、暴行、凶器準備集合、脅迫、背任等に限ります。)暴力行為等処罰法により、罰金刑が処せられ、その刑の執行を終わった日等から3年を経過していない場合
8号禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わった日等から3年を経過していない場合
10号破産者で復権を得ていない場合

場所的要件

場所的要件とは、酒類販売業免許を取得する場所(販売場)についての基準です。
同じ場所に複数の会社が存在する場合はそのままでは免許を取ることはできません。
会社間で人員やレジを共有したり、スペースを共有したままで酒類販売業免許を取得することはできませんから、両社できちんと区分けがされていなければなりません。
また、飲食店内では原則的に酒類販売業免許を取得することはできません。

酒税法第10条要件
9号正当な理由なく取締り上不適当と認められる場所に販売場を設置する場合(酒類の製造場又は販売場、酒場、料理店等と同一の場所等)

経営基礎要件

経営基礎要件とは、申請者の経営状況や酒類販売の実務能力に関する基準です。
例えば、過去3年間の決算で黒字の年が一期もない場合や、直近の決算で債務超過の状態になっている場合は免許が取れないことがあります。
また、一定の酒類販売に関する実務経験がなければ、酒類販売業免許を取得できないケースがあります。

酒税法第10条要件
10号経営の基礎が薄弱であると認められる場合(国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損失の資本金超過、酒類の適正な販売管理体制の構築が明らかでない等)

経営の基礎が薄弱であるとは

具体的には、以下の1~7に該当する場合は「経営の基礎が薄弱である」とされます。

  1. 現に国税若しくは地方税を滞納している場合
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
  3. 最終事業年度における確定した決算に基づく貸借対照表の繰越損失が資本等の額を上回っている場合
  4. 最終事業年度以前3事業年度のすべての事業年度において資本等の額の20%を超える額の欠損を生じている場合
  5. 酒税に関係のある法令に違反し、通告処分を受け、履行していない場合又は告発されている場合
  6. 販売場の申請場所への設置が、建築基準法、都市計画法、農地法、流通業務市街地の整備に関する法律その他の法令又は地方自治体の条例の規定に違反しており、店舗の除却若しくは移転を命じられている場合
  7. 申請酒類小売販売場において、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる場合

適正に酒類の小売業を経営するに十分な知識及び能力

更に、申請者は酒類販売業を行うのに十分な知識と能力を有していなければなりません。
具体的には、以下の経験がある場合はこうした知識と能力があるものと認められます。

  1. 免許を受けている酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く。)の業務に引き続き3年以上直接従事した者、調味食品等の販売業を3年以上継続して経営している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して3年以上である者
  2. 酒類業団体の役職員として相当期間継続して勤務した者又は酒類の製造業若しくは販売業の経営者として直接業務に従事した者等で酒類に関する事業及び酒類業界の実情に十分精通していると認められる者

こうした経験がない場合は、酒類販売管理者講習会の受講状況その他を総合的に判断して経営能力の有無が判断されます。

受給調整要件

地域ごとの酒類の供給を調整することで値崩れを防ぐための基準です。
例えば、通信販売小売業免許では、原則的に国産酒類の取扱ができません。
また、全酒類卸売業免許のように、その地域の年間免許件数に上限がある場合があります。

酒税法第10条要件
11号酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合